Montes Altissimi ~いと深き山々~ 8/27: 雲ノ平〜水晶岳〜ワリモ岳〜鷲羽岳〜三俣蓮華岳〜双六岳〜双六小屋

夜中に星空を見ていたので、起きたのは少し遅かった。黒部五郎岳に朝日が当たって輝いていた。

晴れていて、これまでで最も良い朝だった。水晶岳に登って、三俣山荘まで行けば明日には下山できるなあと考える。
幕営地を出発したのは06:00頃で、もうすっかり明るかった。雷岩の分岐点(二万五千分の一では幕営地からも祖父岳に行ける様に書かれているが、幕営地は行き止まりである)から祖父岳へ向かって歩き始めると、朝日が水晶岳の傍らから昇った。

強烈なシルエットと光線の中で、やはり水晶岳に登ろうと決める。遠く、太郎平が望まれた。


祖父岳へはなだらかな登りが続く。雲ノ平の東端を成しているが、そもそも雲ノ平を形成している溶岩台地は祖父岳のものなのだという。
池塘が点在するスイス庭園の向こうに、薬師岳が朝日を浴びて輝いている。その巨大な山塊。やはり雲ノ平に来て良かった。


祖父岳には07:15頃に到着。無人の広い山頂にはケルンが林立し、それはむしろ賽の河原の積み石の様だった。

眼下には雲ノ平、黒部源流を囲む半円形の稜線の向こうには笠ヶ岳と槍・穂高、そして薬師岳水晶岳、赤牛岳と美しく険しい山々に囲まれた、本当に最奥地である。


尾根を東へ進み、岩苔乗越へ下る辺りから赤茶けた光景になってくる。岩苔小谷も水晶岳の南は崩落が激しく荒涼とした景色である。

08:00に岩苔乗越を通過し、そのままワリモ北分岐へ10分で駆け上がる。ここから、水晶岳は北、三俣山荘は南になるので、ザックを此処に置いていくのが合理的だが、流石に水晶小屋まで担いで行くことにする。
水晶小屋には08:30頃到着、小さいと聞いていたが本当に可愛らしい小屋である。前のベンチにザックを置かせて貰って水晶岳へ出発。あの稜線からいってストックは邪魔なだけだろうということで置いていく(これは正解だった)。
多少注意しないといけない処もあるが、何にせよ荷物が圧倒的に軽いのですいすいと進んで09:20に水晶岳山頂に到着。狭い山頂で、風が強い。見晴らしは抜群である。裏銀座〜後立山の山並みが遙か北まで続く。その左に劔と立山、そしてその間に横たわる黒部ダム

特に、この位置から眺める笠ヶ岳の姿は秀麗と言う外ない。そして、槍ヶ岳の左手、大天井岳辺りの背後にぼんやりと富士山が雲海に浮かんでいるのが見えた。


この先に続く読売新道は赤牛岳を経て奥黒部ヒュッテまでのロングコースである。赤牛岳はとても惹かれる山なのでいつか歩いてみたいと思う。

ともあれ水晶小屋まで引き返してザックを回収し、ワリモ北分岐まで戻る。三俣山荘へ行くだけなら、ここから黒部源流まで下りて登り返せばよいが、詰まらないのでワリモ岳〜鷲羽岳へルートを取る。残念ながら徐々に雲が広がってきて、ワリモ岳に着いたころ(11:00頃)には、見晴らしは難しくなってしまった。
鷲羽岳は、双六小屋からその姿を見てすっきりとした綺麗な山だなと印象に残った。喩えて云うなら巡洋戦艦、それもHMSレナウン(ちなみにアパレルのレナウンはこの艦から名前を取っているのだとか)といったところ。ザレた稜線を頑張って登る(昭文社の地図では何故か危険マークが付いているが、かなり意味不明である)。山頂には11:30到着したが、視界が殆ど無かった。こればかりは止むを得ない。登りと同様にザレた九十九折りをすたすたと下りていって、再びハイマツの中に入り、12:30に三俣山荘に到着。


幕営の受付を済ませて…という積もりだったのだが、まだお昼である。頑張れば双六小屋まで行けそうである。その方が明日下山するのは楽だ。ということで明日の天候を見に小屋に入る。
結論から言うと、明日から再び天気が崩れる様である。となればますます先に進んでおきたい。ということで再びザックを担ぎ、出発する。


双六小屋までは巻き道もあるが、三俣蓮華岳には登りたいと思っていたので頑張って登る。この山は富山、岐阜、長野の北アルプス三県の境に位置し、黒部の東西の稜線が接合して槍・穂高へと伸びている北アルプスの要石とも云うべき山である。というか、小学校の頃から地図帳で気になっていた山である。疲れていたが頑張って13:30頃到着。

山頂はなだらかに広く、目の前には鷲羽岳から赤牛岳に続く長い長い稜線が巨大な海棲生物の背骨の様に横たわっていた。
そのままなだらかな稜線を下り、丸山を経て双六岳に向かう。

珍しいかも知れないが、双六岳の長く広い山頂が好きである。が、雲が急速に低くなってきて、山頂付近が包まれてゆく、急ごうにも今日はかなりのロングコースだったのでかなり限界である。結局山頂に着いた時(14:30)には周囲は真っ白であった。
長々しき山頂の端から下りに入ると、雲が切れて下の方に双六の小屋が見える。小屋に着いたのは15:30で、少し遅い時間だった。7月に来た時は小屋の前のテラス席は満席だったが、今日は誰もおらず静かなものだった。テント場も学生の2団体で過半数、後はベテランらしい2人組とソロは一人だけだった。
ここまで歩き続けてきたが、明日は下山するだけである。



カシミール3Dにて作成)