完本 風狂始末―芭蕉連句評釈

完本 風狂始末―芭蕉連句評釈 (ちくま学芸文庫)

完本 風狂始末―芭蕉連句評釈 (ちくま学芸文庫)

骨董において恐るべき眼力を発揮する安東次男のライフワークとも言うべき、芭蕉連句の評釈の決定版。昔、何かの拍子で手に入れた『潭』9号に灰汁桶の巻が載っていて驚嘆した覚えがある。それを何年か越しで通読した訳だが、思わず「あんた江戸時代に生きたはったんですか!?」と突っ込みたくなる。練達の俳人にして骨董人らしい博識と座敷の空気まで読み取ろうとする嗅覚には、狂句こがらしの巻から空豆の巻まで読む者を次の間に控えさせて離さない。
振り返って連句というものを按ずるに、ここまで濃密な遣り取りを表徴芸術に仕上げるというのは、実際難事であるだろう。
今まで芭蕉という人物には左程関心はなかったが、このような作品を可能にした存在に(作品を超えて)俄然興味を惹かれる。